正伝寺

正伝寺
(正伝護国禅寺)
臨済宗南禅寺派


▲枯山水庭園:	小堀遠州の作庭で江戸初期のもの。一石も用いず、つつじの刈り込みが基調となっているめずらしいもの。7･5･3に配され、「獅子の子渡し」とも呼ばれる。借景に比叡山を望むことができ、その風景は非常にすばらしい。

五山送り火の舟山の山腹、西賀茂のひっそりとした地にある正伝寺。訪れる人も少なく、美しい枯山水を前に、落ち着いた雰囲気が漂う。そんな正伝寺も、かつては国を護りたいと願う一心で建てられた禅寺。創建の禅師はこう詠んだ。「末の世のすへの末まで我国はよろずの国にすぐれたる国」。庭の向こうに雄大にそびえる比叡山を眺めながら、彼等が必死の思いで守り抜いたこの国の素晴らしい景色に、心を動かされる。
○正伝寺の歴史
北条時頼を悟りに導いた中国の僧･兀菴普寧(ごつあんふねい)禅師の法を受け継いだ東巌慧安(とうがんえあん)禅師によって弘安5(1282)年に創建。護国寺の名の通り、元寇の国難に立ち向かうべく、「願わくば神明、国民の五体の内に入り、蒙古の敵を討ち滅ぼさせしめ給い、神は雲となり、風となり、雷となり、国敵を催破せしめられんことを(東巌慧安の祈願文より)」という思いで降伏祈願･国家安泰のためにつくられた。現在の本堂は承応2(1652)年に伏見城から移築されたものである。
・血天井
慶長5(1600)年に起こった関ヶ原の戦いであるが、東軍と西軍が戦いの火蓋を切ったのは伏見城である。徳川家康率いる東軍の主力が上杉征伐に向かった隙を見計らって、西軍が東軍に攻撃を仕掛けた。手始めに行われたのは家康の忠臣･鳥居元忠の居城である伏見城の攻撃であった。鳥居軍は篭城するも、西軍との圧倒的な兵力差の前に2週間で落城、元忠らは玉砕して果て、城内は凄惨な血の海となった。この伏見城の床が寺に移されたのがいわゆる血天井である。正伝寺の他にも、鷹ヶ峰の麓にある源光庵、三十三間堂の近くにある養源院、大原の宝泉院、宇治の興聖寺にあり、血の手形や足跡などを今にとどめている。
○正伝寺のみどころ
	▲	本堂初めは聚楽第の一部であったものが伏見城の城郭という歴史を経て、承応2(1652)年に正伝寺に移築された。重要文化財。堂内には狩野山楽作の襖絵があり、同じく重要文化財に指定されている。血天井も見どころ。
・吉祥山正伝護国禅寺(正伝寺) 　京都市北区西賀茂北鎮守庵町72 　市バス「神光院前」バス停下車徒歩15分　9:00～17:00 　拝観300円